理事長挨拶

 日本遺伝子分析科学同学院理事長挨拶

 日本遺伝子分析科学同学院理事長として一言ご挨拶申し上げます。

 遺伝子分析科学認定士制度は、遺伝子分析科学または遺伝子関連検査に関与する者の学識及び技術の向上と検査の標準化を図り、また一般の人々における遺伝子関連検査に関する正しい知識を啓発し、もってわが国の遺伝子関連検査に基づく良質な医療の発展・普及に寄与することを目的としています。

 遺伝子関連検査の分野の発展には目覚ましいものがあり、近年この分野で働く人の資格認定制度の整備が喫緊の課題として浮上してきました。その背景には、遺伝子関連検査の標準化の遅れ、既存認定制度の対象や審査項目が限定的である、遺伝子関連検査が適切な医療体制の中で実施されていない、遺伝子関連検査の教育内容が十分でない、などの問題点があります。

 上記のような課題を解決する方法の一つが、遺伝子分析技術に携わる技術者の認定試験制度の設置です。このような経緯を経て、平成19年から、遺伝子分析科学認定士(初級)の試験が始まりました。平成28年まで10回の試験が実施され、合格者総数826名に上ります。また、より高度の遺伝子分析技術と指導的な管理知識を問うために平成24年から上級の「一級遺伝子分析科学認定士」の試験が始まり、15名が合格しています。「初級」、「一級」ともに5年ごとの更新制度が設定されています。これは、日進月歩する遺伝子関連検査に関して常に十分理解しておく必要があるからです。

 これまで、遺伝子分析科学認定士の試験事業は、日本臨床検査同学院の一部として実施されてきましたが、平成26年3月14日をもって、新たに一般社団法人日本遺伝子分析科学同学院にて運営することになりました。これは、遺伝子分析科学分野の事業を、独立した法人にて運営する必要性が生じたためです。平成26年4月1日、日本臨床検査同学院が「公益社団法人日本臨床検査同学院」となりました。本事業についても同時に公益認定を取得するよう試みましたが、事業内容の専門性が非常に高く、かつ様々な領域と職域(臨床検査技師以外)に事業の対象としていることなどから、事業の公益性に係る国への説明は、現時点では困難な状況にあるとの判断に至りました。

 一方、広い診療領域における疾患の診断と治療法の選択さらに人命を左右しうる遺伝子関連検査あるいは遺伝子分析科学技術の専門的人材の育成は、広く国民の健康や安全をはじめ社会一般の利益につながる公益性を有していることは言うまでもありません。目下、国・国際レベルで遺伝子関連検査の指導・監督や規制に関するルール作りについて議論が活発化しています。平成29年3月、ゲノム医療の実用化に向けた遺伝子関連検査の精度の確保に取り組む必要性を踏まえ、検体検査の質確保のため、医療法等の改正法案が国会に提出されました。本法案では、我が国の臨床検査の歴史で初めて、医療機関自ら実施する検体検査の質確保のための基準が明示されました。遺伝子関連検査の精度の確保において測定者の資質が大きな鍵を握ります。本法案に基づき、遺伝子関連検査に関するルールが明確化された折に、本事業の公益性について国として認めることが可能となると考えます。その暁には、日本遺伝子分析科学同学院が公益社団法人日本臨床検査同学院に合流することを考えています。その際の作業が円滑に進められることを考えて、法人の名称には,遺伝子分析科学に「同学院」の名を付けて、資格認定制度そのものや制度委員会の運営構成は継続しています。また、試験の内容や取得資格には変化ありません。この点、皆様のご理解をお願いする次第です。

 本認定制度にご理解を頂き、多くの方々が受験し合格されることにより、専門的な技術者の人材育成を通して、わが国の遺伝子関連検査に基づく良質な医療の発展・普及に寄与することを願ってやみません。

 平成29年4月1日
 
東海大学医学部・基盤診療学系臨床検査学 教授
 宮地 勇人